【SQ3】7 ふたりの休日
衛兵の亡骸に祈りを捧げ、改めて周囲を見回した。床に落ちた血は東へ点々と続いており、彼を殺害した何者かがそちらの方向へ去っていったらしい事を物語っている。まだ乾ききっていない、比較的新しい血痕だ。今からでも追いつける可能性は十分にあるだろう。
「まだ余力はある。先へ進もう」
ルル・ベルの言葉に異論を挟む者はいなかった。魔物の襲撃を警戒しつつ、『カーテンコール』は青い迷宮を奥へ奥へと進んでいく。
地下七階はこれまで以上に複雑な地形をしており、少しでも気を抜くとあらぬ場所から魔物が飛び出してきたり、抜け道を見逃してしまったりする事も多い。少しの変化も見逃さないよう、目につく範囲をくまなく探索しながら歩みを進める。
「しかし、気の毒な事だ。こんな場所で、誰にも看取られず逝くなど……」
タマキが神妙に呟く。その手に握られているのは先程の亡骸から回収した記章だ。海都の紋章と馴染みのない文字列が記されたそれは、故人にとって大きな価値のあるものだったのだろう。ぐしゃぐしゃに握りしめられていた痕を指先で伸ばすタマキに、隣を歩いていたライディーンはそうかな、と応える。
「彼は使命に殉じた。それは賞賛される事ではあっても、哀れまれる事ではないとおれは思うけどな」
「……大義名分を盾に犠牲を良しとする考えには賛同できないな」
「その考えも間違ってはいないんだろう。けど、おれは騎士だから、こんな生き方しかできない」
「…………」
釈然としない表情で黙り込むタマキに、ライディーンは穏やかな苦笑を向ける。
床の血痕は曲がり角の先まで続いている。狭い通路の突き当たりにあったのは下階へ繋がる階段で、それ以外の分かれ道や抜け道は存在していないようだった。血痕は階段の中ほどで途切れている。
「罠だったりしない?」
「どうかしらね。でも他に道は無さそうよ」
「では、行くとしよう。何にせよいずれ通らねばならない道だ」
そうして、一行は急な段差をゆっくりと下りていく。階下から冷たい空気が流れてくる。暗く、長く続く階段の様子はぽっかりと口を開ける深淵にも似ていて、一歩進むごとに海の底にでも沈んでいくかのような心地がした。
◆
ギルドの仲間たちがオランピアを追って迷宮を進んでいるその頃、アルフレッドは行くあても無く、ひとりで街をぶらついていた。時刻は正午過ぎ、多くの人が労働に従事している時間という事もあり、大通りに人の姿はまばらだ。すぐそこの酒場から知らない誰かの怒鳴り声。真っ昼間から元気な事だなあ。とぼんやり思いつつ、彼はどこへとも知れず足を進める。
タマキがギルドに加入して以降、アルフレッドはしばしばこうして街での留守番を任されるようになった。他の四人とは違い、アルフレッドとタマキは数日おきに交代で探索に参加する事になっている。アルフレッドからすると自分たち二人だけが交代制というのは非効率的ではないかと思わなくもないのだが、わざわざそう言ったところでまたパーニャに睨まれるだけだろうし、何より彼女たち四人が固まって行動したがる理由も何となく分かるため口出しはしなかった。
不安なのだろう。ルル・ベルの守りを手薄にするのが。
主従というのも難儀なものだ……と、ルル・ベルと従者三人の置かれた状況に思いを馳せていたアルフレッドだったが、ふと視界の端に入ったあるものに気付いて足を止める。それは紫色をしていた。より正確には、それは紫色のワンピースを着た少女だった。彼女は通りに面した店のショーウィンドウをひとりで眺めている。どうやら連れはいないようだ。
アルフレッドはしばし思案し、それから意を決して少女の元へ歩み寄る。
「やあ、こんにちは」
「え? あ、えーと。アルフレッドさん」
振り返った少女がアルフレッドの姿を見て目を瞬かせた。片手を挙げて応えつつ、アルフレッドは彼女に問う。
「今日は探索は休みかい、ベロニカ」
「うん。アルフレッドさんも? 奇遇ね」
そう言ってベロニカはアルフレッドを見上げ、可愛らしく小首を傾げる。私は留守番だよと訂正し、アルフレッドは少女の姿をまじまじと眺めた。よくよく見れば彼女が今日着ているワンピースは普段着ている星術師の衣装ではなく、涼しげな薄手のものであるらしい。服装を見られている事に気付いたベロニカは、ふふんと鼻を鳴らしてその場でくるりと回った。
「可愛いでしょー。なけなしのお小遣いで買ったんだ」
「ああ……よく似合ってるよ」
正直なところアルフレッドは女性のファッションには微塵も興味が無かったが、それをこの状況でわざわざ言うほど彼は愚かではなかった。装いを褒められたベロニカは満足げに笑う。
「ありがと! ……あ、そうだ。アルフレッドさんこれから暇?」
「暇といえば暇かな。予定は特に無いし……」
「じゃあちょっと付き合ってくれない?」
「付き合う……?」
思わず聞き返せば、ベロニカはついてきて! と言って通りを歩き出す。アルフレッドは少し迷ったが、どうせ何かする予定も無いのだからと素直についていく事にした。らしくない事をしている自覚はあるが、まあ、たまにはこういうのも良いだろう。
「通った事ない道をひとりで行くのって、ちょっと不安じゃない? いつもはレイファやカゲチヨが一緒に来てくれるんだけど、今日は忙しいみたいだったから」
数歩先を行くベロニカに相槌を打ちつつ入り組んだ路地を抜けていく。角をいくつか曲がり、坂や階段を上ったり下りたりした先でようやく辿り着いたのは小高い場所にある小さな店であった。辺りを見回すアルフレッドをよそに、玄関扉にかかった看板を確認したベロニカはうんうんと頷く。
「ここね。アルフレッドさんって甘いの食べれる?」
「ものによるけど、だいたいは好きだよ。お菓子か何か食べに来たのかい?」
「うん。とりあえず入ろ」
ベロニカが意気揚々と扉を引いてこぢんまりとした店内に入っていくので、アルフレッドもそれに続く。女性店員ののんびりとした声が二人を出迎えた。自分たち以外に客の姿は無い。カウンターの前に立ったベロニカは、壁にかけられたメニュー表を見てうーんと悩ましげに唸った。
「どっちにしよっかな。でもやっぱり最初だから定番のやつが良いよね。塩ミルクひとつください!」
「はーい」
「アルフレッドさんは何にする? あ、別に無理して食べなくてもいいけど」
そう言われ、アルフレッドは壁のメニューに視線を向けた。ベロニカが注文した「塩ミルク」以外にも「ベリー」「紅茶」「蜂蜜レモン」などの文字が並んでいる。しばし黙考し、彼はベロニカに問う。
「君は何と何で迷ってたんだい」
「私? 塩ミルクとベリーどっちにしようかなって」
「じゃあ私はベリーで」
「……!」
ベロニカが目を丸くする。彼女に苦笑してみせつつ、アルフレッドは内心で嘆息した。らしくない、本当にらしくない事ばかりしている。流石に危機感を覚え始めたが、どうも彼女の前では普段の調子で振る舞う事が憚られてしまう。
初めて少女の名を聞いた時から、アルフレッドの胸にはある疑念が渦巻き続けている。
「はい、塩ミルクとベリーおまちどうさま」
「ありがとう」
カウンターの奥に引っ込んでいた店員が戻ってくる。その手にあるのはジェラートと呼ばれる冷たい菓子だ。冷却装置から取り出されたばかりのそれは柔らかな照明の光を受けてきらきらと輝いているように見える。
小銭と引き換えに商品を受け取り、店員ののんびりとしたありがとうございましたあ、を背中で受け止めながら二人は外へ出た。店の前の日陰には小さなベンチが置かれてる。簡素な木製のそれに腰かけたベロニカは、両手で握った塩ミルク味のジェラートを一口食べてふにゃりと頬を緩める。
「おいし~。アルフレッドさんも早く食べないと溶けちゃうよ。ほら座って座って」
「ああ……」
促されるままに腰かけ、淡い赤色のそれを一口頬張る。確かに美味しい。ミルクのまろやかさの中にベリーの酸味が程よく残っており、体温でとろけると共に爽やかな甘みが口に広がる。凍った果実の欠片もアクセントにアクセントを加えていて良い感じだ。ここはなかなか「当たり」の店のようである。ルル・ベルやパーニャに教えてやったら、良いご機嫌取りになるかもしれない……と打算じみた考えを巡らせつつ二口目を口に運ぶアルフレッドの腕を、ベロニカがくいくいと引いた。
「ね、一口交換しよ」
「……あー……女の子はそういうの、嫌がるもんなんじゃないの?」
「私は別に気にしないよ。そんなお上品に育ったわけでもないし」
「そう……」
釈然としないながらもベリーのジェラートを差し出せば、ベロニカは大きく口を開けてそれを頬張った。にこにこと嬉しそうな彼女が代わりにと突き出した塩ミルクを、彼は掌を掲げて阻む。
「私は良いよ。君がぜんぶ食べてくれ」
「えー、本当にいいの? じゃあお言葉に甘えて」
あっさり引き下がって自分のぶんの菓子に集中し始めたベロニカの横顔を、アルフレッドは静かに眺めた。それからそっと視線を外し、眼前に広がる景色を見る。特徴的な緑の屋根の背後には遥か水平線まで広がる海が見える。今日の海都は晴天だ。燦々と照る陽の光を反射し、海面は青く煌めいている。
しばしの間、沈黙が流れた。ジェラートを何度か頬張り、合間合間に少女の横目で見ていたアルフレッドだったが、やがて小さく息を吐くと口を開く。
「君は……海賊、なんだったな」
「そうだよ。もしかして意外に思ってる? 私みたいな女の子供が海賊だなんて」
「いや、……ああ、いや、そうだな。その通りだ」
「よく言われる。まあ普通じゃないかもしれないけど、よその人が心配してるような事は無いから大丈夫だよ」
そう言ってベロニカはにっこりと笑ったが、アルフレッドの顔には戸惑いと申し訳なさとがない交ぜになったような微妙な表情が浮かんでいる。ベロニカはしばし俯いて何事か考え込み、それから呟く。
「ま、いっか。隠してるわけじゃないし」
「……?」
「私ね、捨て子だったんだって。積み荷に紛れて船に運び込まれてたの。赤ちゃんの頃だから覚えてないけどね」
アルフレッドの動きがぴたりと止まる。彼の目が大きく見開かれたのに気づかないまま、ベロニカは続ける。
「それで船長……インディゴじゃなくて、前の船長ね。その人が私を引き取って育てるって決めて、それで私は海賊団の子になったの。とは言っても船に乗るようになったのはここ数年だけど」
「……、……ベロニカという名前は、誰が?」
「ん? 誰かは分かんない。私と一緒に置いてあった本に書かれてたの、「ベロニカへ」って。だからベロニカって名前になったみたい。だからたぶん、名付け親は私を捨てた誰かって事になるのかな……」
足をぶらつかせながら答えるベロニカの声には悲壮感は無い。ジェラートをひと舐めし、眼下の街並みとその向こうに見える海を目を細めて見つめて彼女は小さく笑った。
「海賊って野蛮で危ない連中だってみんな思ってるだろうし、実際そうなんだけど。でもやっぱり私は海賊だって堂々と名乗りたいんだよね。誰がどう思おうと私は「セレスト・ブルー海賊団のベロニカ」だから」
と、そこで言葉を切ってアルフレッドに視線を向けたベロニカは、彼の横顔がいやに青い事に気付いてぎょっと目を剥いた。その頬を伝う汗と手元で溶けて垂れたジェラートを見て慌てて懐からハンカチを取り出し、彼女はアルフレッドへ声をかける。
「ちょ、ちょっと大丈夫!? どうしたの急に!」
「……! あ、ああ……いや……」
「もしかして具合悪いの?」
心配そうに見上げてくるベロニカの、その顔をちらりと見て、それからすぐに視線を逸らしてアルフレッドは詰めていた息を吐く。差し出されたハンカチをやんわりと押し返しながら彼は絞り出すような声で答えた。
「……大丈夫だ。心配はいらない……」
「大丈夫そうには見えないけど……」
「最近は……第二層の探索ばかりだったし、宿からも出なかったから、久々に太陽の下を歩いて疲れてしまったのかもしれない。私は宿に帰るよ。誘ってくれたのにすまない」
微かに震える声で早口にまくし立て、アルフレッドはふらふらと立ち上がる。引きとめようとするベロニカを制し、溶けたジェラートで汚れた手もそのままに何歩か後ずさった。ぎこちない笑みを浮かべ、告げる。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
そのまま返事は待たずに逃げるように立ち去る。ちょっと、と困惑したように叫ぶ声が背中越しに届いたが、彼が足を止める事は無かった。
階段を下り、上り、坂を下り、狭い路地を駆け抜ける。どのような道を辿ったのかも分からないまま行き着いた人気のない暗がりで、アルフレッドはついに足を止めた。心臓が早鐘のように打っている。震える膝を支えておくことができず、思わず地面に座り込んだ。立っていられない理由は急に走って疲労したからというだけではないし、体調が悪くなったのは太陽の光を浴びたからではない。
何という事だ──唇を噛みしめ、彼は頭を抱える。胸中に渦巻いていた疑問が恐るべき形で現実となってしまった。まさか、とは思っていたのだ。だが勘違いだと思っていたし、勘違いであってほしいと願っていた。彼女が何も知らないらしい事は不幸中の幸いであったが、同時にそれは彼にとって最大の不幸でもある。
例えば、彼女の両親が酒とクスリに溺れた、最悪の人間だったとして。
その両親が金欲しさに生まれたばかりの娘を売り飛ばそうとしたとして。
見兼ねた兄が一か八か停泊していた船の積み荷に彼女を紛れ込ませたとして。
そんな経緯があったのだとしても、彼女にとっては「捨てられた」という事実だけが唯一の真実なのだ。捨てられて、拾われて、元気に育っている。それだけだ。それ以外は何も必要ない。だから。
──この腕に小さい君を抱いて夜の港を駆けた。自分と揃いの紫の瞳が、家の裏に咲いていた花と同じ色をしていたから、その花の名を与えた。それを忘れないでいてほしくて、唯一手元に残っていた古い本にその名を託した。君が元気で良かった。幸せそうで、良かった。
そんな言葉も彼女には必要ないのだ。自らを捨てた男が今更現れたところで何になるというのか。邪魔なだけだ、覚えてもいない過去からの来訪者など──生き別れの兄、など。
だけど、やっぱりそれは、少しずるいんじゃないか。
膝に顔を埋めて言葉にならない呻きを吐いた。掌のべたつく感触と甘い匂いが頭の中をかき乱す。相変わらず空は晴れ渡っているが、路地の狭い隙間には太陽の光は届かない。うずくまる彼の頭上には濃い陰が落ちている。
◆
こんな陽気だとどうにも気が抜ける。ぽかぽかとした陽気を浴びながら、カゲチヨはぼんやりと空を見上げて流れる雲を眺めていた。あの雲、何かの形に似ている──そう思いつつ腰の短刀を抜き、振り返りざまに斬撃をひとつ。一太刀の下に倒れ伏したオオヤマネコの姿を見て、そこで彼はふと気付く。あの雲はネコの顔の形に似ていたのだ。分かったところでもう一度空を見たが、ネコに見えた筈の雲は既に形を変えてしまっていた。とても残念である。
「……チヨ? お前、また生産性のない事考えてるな……」
緊張感のない様子のカゲチヨにインディゴが呆れた声をかけた。彼はオオヤマネコの死骸の傍にしゃがみ込むと、投げ出された肢から爪を引き抜いていく。
オオヤマネコの爪は野営に使用するテントの材料になる。テントは探索の必需品であり、材料となる爪も常にかなりの数が必要とされているのだが、近ごろは第二層での大規模作戦の影響もあって殊更にその需要が高まっているのだ。つまり、稼ぎ時である。休日返上でわざわざ迷宮に来てネコと戯れているのはそういった理由だ。
「つっても、確かにあんま長居するのはアレだよなあ。これ剥ぎ終えたら引き揚げるか」
「分かった」
「帰ったら昼飯にしようぜ」
笑顔を向けてくるインディゴに、カゲチヨはひとつ頷き返す。集めた爪の数は二十個ほど。多少の色をつけてもらったとしても数百エン程度にしかならないが、それでもゼロよりはましだろう。
作業は問題なく終了した。爪が大量に詰まった籠を抱えたカゲチヨは出口へ向かおうとするが、その前に、とインディゴが彼を呼び止める。
「ちょっと訊きたい事がある。お前、『カーテンコール』のあの女の事なにか知ってるか?」
「あの女」
「ルル・ベルとかいったな。あいつだ」
予想もしていなかった問いを急に投げかけられ、カゲチヨは口をつぐんだ。何か知っているかと問われれば、知っていると言えなくもないが。黙り込むカゲチヨの逡巡を見透かしたようにインディゴは彼の肩に手を回すと穏やかな声で囁く。
「お前が自分から言うわけじゃない、俺が言わせる(・・・・・・)んだ。ぜんぶ俺が悪い。だから教えてくれよ、な?」
「…………」
カゲチヨは頭巾の下に覗く目を何度かゆっくりと瞬かせて、細く息を吐いた。それから周囲を憚るように小さな声で言う。
「さる国の姫君だと。それ以外は何も」
「成程、それで本人はそれを隠したがってたと。ふーん、そうか……」
目を細めて思案するインディゴの横顔を、カゲチヨは何か言いたげに見る。目敏い海賊はすぐにその視線に込められた意図に気付いた。にっと笑い、カゲチヨの肩をぽんぽんと叩く。
「無理言って悪かったな。帰ろうぜ! 明日からは船旅だし、体を休めとかねえと」
「……お前は」
「ん?」
「最近、おかしい」
あまりにも直球な指摘にインディゴはぽかんと口を開ける。カゲチヨはふいと彼から視線を外した。彼の相変わらずの無表情の裏に微かな怒りを見たような気がして、インディゴは小さく唸る。頭から冷や水でもかけられたかのような心地だ。ここまで言わせてしまうとは、自分は相当「おかしかった」のだろう。内省しつつ応える。
「ああ……いや、そうだな。冷静を欠いてた……慣れない事ばっか続いて疲れてんだ。そういう事にしておいてくれ」
「そうか」
カゲチヨはそれだけ応えて、後は何も言わなかった。その反応にインディゴはがっくりと肩を落とし、これまでになく覇気の無い声で帰ろう……と呟いて歩き出す。機嫌とか取った方かいいかなあ。ベロニカが良い甘味の店教えてもらったとか言ってたし、連れて行ってやろうかな……そう思案するインディゴの顔には、先程カゲチヨを問い詰めた時の数倍真剣な表情が浮かんでいた。
アーモロードは今日もよく晴れていて、空が曇る気配は微塵も感じられない。明日から予定しているアユタヤ行きの航海もきっと好天に恵まれる事だろう。しばしの別れとなる迷宮の空気を惜しむのもそこそこに、何とも言えない空気感のまま、二人の男は迷宮を後にした。
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