2021.12.11 08:15【SQ3】幕引きの鐘よ誰が為に まさか魔物まで使役してくるとは思わなかった。『カーテンコール』が海洋祭祀殿の最奥、転移装置の安置された場所に辿り着いたその時、そこには手負いのクジュラがいた。彼は一行の姿を認めると、僅かに眼差しを鋭くして言った。お前たちも・王家の森へ侵入するつもりか、と。 言葉を返す間も無く、...
2021.12.11 08:01【SQ3】深層航路 熱──おぞましいほどの熱量が、視界の端から端を駆け抜けた。思わず呆けたその一瞬に目前まで迫っていたそれを、インディゴは避けきれなかった。咄嗟に目を瞑る。瞬間、体が浮いた。投げ飛ばされたのだと気付いたのは受け身も取れないまま床に叩きつけられた後の事だ。 全身の痛みに呻きながらも手...
2021.12.11 07:51【SQ3】もくじ世界樹の迷宮3『最果てのセレスティアル』序1 はじめての探索2 戦え! わけあり冒険者3 海賊、海に出る4 戦闘・ナルメル5 行き倒れブルース6 揺蕩う水面に血7 ふたりの休日8 深き都へ9 MACHINA10 再会11 運命の三叉路12 炎門の番人13 海底に星は見えるか14 ...
2021.12.11 07:44【SQ3】終 インバーの港には今日も多くの人が出入りしている。アーモロードと各都市を繋ぐ航路がほぼ復活した事により、海都にやって来る旅人の数はここ数か月で驚くほど増加していた──同じように、樹海に入る冒険者の数も。「踏破されたら数が減るもんだと思ってたけど、違うんだねえ」 窓から大通りを見下...
2021.12.11 07:40【SQ3】21 海底に星の降る 死せる■■■■ ルルイエの館にて 夢見るままに待ちいたり ◇ 一行を迎えた「真祖」は、以前とは見た目が随分と変わっていた。幼い子供の姿から、威厳ある大人の姿へ──あるいはこちらが本来の姿なのか。真相がどちらであれ、ひとつ確かなのはあの断罪の間の封印がもう意味をなさなくなった...
2021.12.11 07:34【SQ3】20 いざゆけ冒険者「……グートルーネ?」 呆然と呟く王の声を聞いた。姫君の紅玉の瞳が潤むのを、桃色に染まった頬に雫が伝うのを、見た。 ◆「これでハッピーエンド、めでたしめでたしで十分だろ。何だって俺たちが半魚人どもの相手をしなきゃならないんだ?」 苛立ちを隠そうともせずそう言った男に、ルル・ベ...
2021.12.11 07:31【SQ3】19 ALIVE 久々に訪れた第三層は相も変わらず茹だるような熱気に包まれている。無尽蔵に吹き出してくる汗を拭い、インディゴは水筒に残った水を一気にあおった。隣を歩いていたティルがむっと唇を尖らせて彼の腕を引く。「オレもみずほしい!」「ああ? そういう事は先に言えよ」「うううー!」「……良ければ...
2021.12.11 07:29【SQ3】18 勝利宣言「では、行こう」 固く閉ざされた扉を前に、少女は小さく呟いた。 ◇ 迷宮第五層──正確には迷宮とは別の場所、世界樹の麓に位置するのだが、便宜上五層と呼ばれている──の探索は困難を極めていた。辺りを覆う霧と平衡感覚を奪う鏡面のような床。更には潜り抜けた瞬間に別の場所で瞬間移動す...
2021.12.11 07:26【SQ3】17 同じ空を見るひと──マキナ、自由にしなさい。 病床の老人はそう言った。呼びかけられたアンドロは枕元に佇み、彼の顔をじっと見つめている。 青い瞳の奥で微かな駆動音が鳴る。簡易的なサーチをかけただけでも、老人の体がそう長くは持たない程に衰弱している事が分かった。アンドロは僅かに首を傾げ、視覚センサー...
2021.12.11 07:24【SQ3】16 思い出のあなた いよいよ吐きそうだ。アルフレッドはきりきりと痛みだす胃を押さえると、ひとつ息を吐いて目の前の光景に視線を戻す。そこにいるのは言い争う二人の少女だ。「だからー。そう大声出されるとまた魔物が来るじゃん。静かにしてってば」「何よ偉そうに! あと勝手に主導権を握るなっ!」 ぎゃんと吼え...
2021.12.11 07:21【SQ3】13 海底に星は見えるか 第四層・深洋祭祀殿。かつて深海に沈んだ海都の祭祀場だったというそこは、現在はフカビトの巣窟となっている。 『セレスト・ブルー』にとって初めてのフカビトとの邂逅は、見つけた抜け道を地図に描き残して探索を切り上げようとしたその時に起こった。遺跡の暗がりから飛び出してきた、水色の肌を...
2021.12.11 07:17【SQ3】15 死線で踊れ「私は……、あの優しかった兄ともう一度会いたいだけなのです!」 ◆ いよいよとんでもない事になってきた。依頼されていた「不凋花」アラマントスは実はグートルーネ姫の寿命を伸ばす妙薬の原料であり、百年前から姿を変えず生きている不老の姫君はかつて深海へ消えた兄の姿を捜し続けているの...