2023.01.08 14:56【Re:D2】0101 セレスト・ブルー海賊団は休暇を楽しむ筈だった。 船が難破した。 難破――というには少々語弊があるかもしれない。この世界に存在するおおよその物には寿命というものがあり、当然船舶にも寿命、つまり耐用年数があって然るべきであるという事は、恐らく多くの人にご理解頂けるであろう。だか...
2021.12.11 11:09【D2】もくじ世界樹と不思議のダンジョン2『オーベルフェ妖刀話譚』1 セレスト・ブルー海賊団は休暇を楽しむ筈だった。2 かくして、新人ギルドは結成された。3 ふたりのシノビは迷子になった。4 彼は最後のおにぎりを口に運ぶことにした。5 新人ギルドは着々と歩を進めていた。6 お友だちですのと少女...
2021.12.11 11:03【D2】13 かくて彼女は手を振った。 オーベルフェで稼いだ金銭で、ついに船を新調する事ができた──港町に留まっていた部下からその報せを受け取ったインディゴは大きくガッツポーズをした。これで海に出る事ができる。彼は早速街に散らばって各々雇われ仕事に励んでいた船員達を全員召集し、一週間後に街を出ると宣言した。というのが...
2021.12.11 11:02【D2】12 刃はその首筋には届かなかった。 彼は回想する。浅い微睡みの中、過去の記憶を夢想する。まだ自分が幼く、刀もろくに振れない出来損ないのシノビだった頃の記憶だ。 隙間風の吹き込むぼろ屋の土間で、母が炊事をしている。漬物を切るその指はあかぎれだらけで痛々しい。母が振り向き、自分を見る。もう少しで出来るから、待っていて...
2021.12.11 11:01【D2】11 彼女は刃を手に取った。 街での連続殺人がぴたりと止み、今度は迷宮での辻斬りが再開した。以前とは違い犯人の顔も名前も既に割れているというのに、捕らえるどころか目撃証言すら出てこないのだからやはりシノビの潜伏能力は侮れないという事か。 今日の朝刊を読みながら、ラウレアは不機嫌そうな顔でミルクたっぷりの紅茶...
2021.12.11 10:58【D2】10 殺人犯はここまでかと微笑んだ。 辻斬り・ナツキが殺された。 最初にそれを見付けたのは、二日酔いに苦しみながら朝早く船着き場に出勤してきた船頭だった。血の臭いに気付いた船頭が近くの茂みを覗いてみたところ、首の無い死体が転がっていたのだ。頭部は見付からなかったものの、怪我の状態や服装から見て間違いなくナツキ本人で...
2021.12.11 10:56【D2】9 彼らが協定を結び、街では宴が始まった。 ウワバミから一連の話を聞いた一同は、揃って頭を抱えた。辻斬りの目的、件の刀の詳細、ウワバミ達の素性、どれもこれも初めて聞く情報で理解が追い付かない。しかしこれだけは言っておきたいとインディゴが口を開く。「もしかして八割方あんたらが元凶じゃねえか?」「人聞きの悪い事を言ってくれる...
2021.12.11 10:53【D2】8 復讐者は、家族の仇と対峙した。 オーベルフェ郊外、湖畔に広がる広大な森の中にナツキはいた。木々の間を縫って進んでいった先には森を伐採して切り拓いたのだろうか、自然にできたと言うには奇妙に開けた空間が広がっている。どうやら小さな集落のようだが、点在する家屋らしき建物は多くが草木に覆われて朽ち果てていた。静かに歩...
2021.12.11 10:49【D2】7 海賊団とシノビ達は、辻斬りと遭遇した。 第四迷宮の下層部は生い茂る木々に覆われて鬱蒼としている。木々の隙間を縫うようにすいすいと進んでいくシノビ二人の背中を眺め、インディゴは頭を掻いた。「若いってのは良いなァ」「置いて行かれるぞ、四十路」 周囲を警戒しながら足許に生えていたミント草を摘んでいたティルが、呆れたように言...
2021.12.11 10:46【D2】6 お友だちですのと少女は言った。 いくら冒険者といえども、毎日毎日迷宮に潜っていては心も身体も参ってしまう。という事で、オーベルフェの冒険者には、冒険者ギルドの規定によって週に二日程度の休息日を設ける事が義務付けられている。どの日を休日にするかはギルド毎に異なるが、やはり週末と週始めに一日ずつというギルドが多い...
2021.12.11 10:42【D2】5 新人ギルドは着々と歩を進めていた。 第四迷宮ともなると、いよいよ本格的に『世界樹の迷宮』といった空気になってくる。襲い来るネズミだのモグラだのゴリラのようなナマケモノだのを処理しつつ、『アルデバラン』は破竹の勢いで探索を進めていた。ここ三週間ほど行動を共にして分かった事だが、どうやらこのパーティはなかなかバランス...