2021.12.19 04:51デイヴィ・ジョーンズによろしく お前が随分遅いモンだから、やっこさん、今頃海の底で待ちくたびれてる事だろうさ! 青く澄み切った空に、輪郭のはっきりとした白雲がぽつぽつと浮いている。風の流れに合わせてゆっくりと形を変えていくそれらを、ティルは船縁に顎を乗せてじっと眺めていた。傍らではオオタカが目を閉じて羽を休め...
2021.12.19 04:40暗夜光・後「……祭り?」 ネオンの問いかけにフェルはひとつ頷いた。「そう、建国記念日が近いからね」「建国記念日を祝ってお祭りをするの?」「うん。記念日と、その三日前から。大通りなんかは夜通しずっと大騒ぎだよ。国王陛下のパレードもあるしね」「へえ……」「今年は特に盛大にやるみたいなんだ。去年...
2021.12.19 04:38暗夜光・中 フェルが夜間警備の任務に就いてから既に三週間が経とうとしていた。今日も彼は水筒と菓子と翻訳途中の小説を鞄に詰めて夕陽に照らされた塔を上る。任務を始めた頃に比べるとその足取りは随分と軽い。 階段を上りきって最上階に辿り着いたフェルは、鍵を開けてドアノブに手をかけるその前に今までの...
2021.12.19 04:36暗夜光・前 フェルにその任務が与えられたのは、彼が正式に騎士団の一員と認められて二ヶ月が経った頃だった。 勤務地は街外れにある古びた砦だという。既に役目を果たし本来の用途として使われなくなって久しいその場所は、現在は錬金術師達の研究施設として稼働しているのだと聞いた。まだ陽も傾いていない時...